濵田暁彦医師 コラム No.97
2020/03/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.231」2020年4月号掲載)

新型コロナウイルス感染症;COVID-19(コヴィッド19)とは?その1


「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」は2019年12月に中国の湖北省武漢市で1人の原因不明の肺炎患者の気管支洗浄検体から検出された、これまでヒトへの感染報告が無い新しいタイプのコロナウイルスによる感染症です。従来コロナウイルスは一般的な軽い風邪のウイルスでほとんど重症化することはないのですが、今回のCOVID-19は一部の患者さんが重症化し肺が破壊されて急性の呼吸困難(ARDS)で死亡する事がある危険性の高いウイルスです。2020年1月に中国で急速に感染が広がりましたが各所の封鎖政策(ロックダウン)により中国国内では鎮静化しつつあると伝えられています。しかし現在全世界に感染が拡大しており、特にイタリアやスペイン、ドイツ、フランスといったヨーロッパの国々では、爆発的な患者急増(オーバーシュート)を起こしており、これらの国々でも中国の様に数週間、都市を封鎖し、強制的な外出禁止や店舗閉鎖などが行われ始めています。

 これまでにも2002年に中国南部の広東省から広がった重症呼吸器症候群SARS(サーズ)や、2012年中東のサウジアラビアから広がった中東呼吸器症候群MERS(マーズ)の原因ウイルスも、それまではコウモリやラクダなどの動物が持っていたコロナウイルスが遺伝子変異を起こしてヒトへの感染性を持つ様になった、今回とはまた別のコロナウイルスによる重症肺炎でした。このようにウイルスは一般的に特定の動物にのみ感染する性質をもっていてこの動物のことを「宿主(しゅくしゅ)」と呼びますが、遺伝子が変異することでヒトにも感染できるようになると「人畜共通感染症」と呼ばれるようになります。しかしヒトは初めて出会うウイルスに対して、特異的で強力な免疫=抗体(獲得免疫)をまだ誰も持っていません。そのため一般的な外来の微生物に対する免疫(自然免疫)のみで対処しなければなりません。感染初期の発熱はこの自然免疫の働きを助け病原体の増殖を抑えて免疫の活性を高めると考えられますが、自然免疫で対処できない場合には重症化してしまうのです。
 このような新興の重症感染症が発生することを「アウトブレイク」と言い、感染症が世界的に大流行することを「パンデミック」と言います。世界保健機関(WHO)は3月11日に今回のCOVID-19を「パンデミック」と位置づけ各国に対策強化を訴えました。日本では幸い3月20日の時点では中国やヨーロッパの国々のように爆発的な患者急増は起きていませんが、クラスター感染と呼ばれる小規模な集団感染が各地で起きています。
 3月19日に行われた専門家会議の報告書によると、これまでのクラスター感染の発生状況から今回のCOVID-19 の特徴は、①換気の悪い密閉空間に、②多数の人が密集して、③近距離で密接に会話や発声が行われるという「3つの密」といわれる条件が重なった時に起こりやすく、人口の多い都市部での感染者が増えています。また多数が集まるイベントやコンサートなどが爆発的な患者の急増(オーバーシュート)を起こす可能性が今後も引き続き懸念され、そうなった場合には都市の封鎖(ロックダウン)も行わざるを得ないと警鐘を鳴らしています。そのためワクチンや抗ウイルス薬が開発されてみなさんに十分に行き渡るようになるまでは、一人一人の心がけつまり「咳エチケット」と先に書いた「3つの密を避けること」が最も大切な予防法となるのです。


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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会