濵田暁彦医師 コラム No.95
2019/01/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.229」2020年2月号掲載)

「肩凝り(こり)」の話〜その1


私は最近とても「肩こり」で辛い思いをすることが多くなってきました。2015年の厚生労働省・国民生活基礎調査では、何らかの体の症状を訴える有訴者は、男性では1位:腰痛、2位肩こり、女性では1位:肩こり、2位:腰痛と、この2つの訴えが日本人の中では最も多いことがわかります。

 実際、肩こりは頸(うなじ)から肩甲骨の下辺りまで広がる「僧帽筋(そうぼうきん)」という筋肉領域のこわばった感じや不快感、凝り感、重苦しさや痛みと言った症状の総称です。肩こりは英語では、stiff neck(硬い首)やneck pain(首の痛み)と言い、stiff shoulders(硬い肩)と言うとむしろ「肩が痛くて上がらない=五十肩」のように聞こえるそうです。この違いは英語のshoulder(ショルダー)は腕の付け根つまり肩関節から肩甲骨辺りを指し、日本語のように首は含まず、首よりも外側の部分を指すからです。日本では昔は「肩が張る」という言い方が主だったようですが、夏目漱石が新聞連載の『門』という小説で肩が「凝る」という言い方を使ったことがきっかけで日本中に広まったと言われています。日本ではさらに昔、今から1300年前の奈良時代から「揉(も)み療治」つまり「按摩(あんま)」という今で言うマッサージが学問として位置付けられていましたし、日本古来の入浴法「打たせ湯」で、高い位置から肩に温泉を当てることで凝りをほぐす方法もありました。漢方薬で有名な「葛根湯」の主な生薬である「葛(くず)の根」は、風邪薬として有名ですが、解熱効果だけでなく血行を良くして発汗を促す効果があることから、江戸時代の人々は葛根を煎じて肩こりの薬として飲んでいたそうです。

 こんな日本人の多くが昔から悩んできた「肩こり」ですが、原因や診断法、治療法は実際今でも定まったものがありません。原因として考えられるのは、読書やパソコン、最近ではスマートフォンやテレビゲームなどで、首や背中が緊張し続け、猫背や前屈みの姿勢を続けることで、「ストレートネック」または「スマホ首」と言われるように本来の緩やかな首の骨(頸椎)の後ろ方向への湾曲が失われて前方に直線化した状態になることや、眼精疲労や運動不足、年齢による筋肉量の低下、精神的なストレス、片方の肩にかけるショルダーバッグ、高い枕、冷房や血流の悪さから来る冷え、または歯を噛(か)みしめる癖(くせ)や歯軋(はぎし)りなど、様々な原因が挙げられています。次回も肩こりの治療法、マッサージなどについてさらにお話しして行きましょう。


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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会