濵田暁彦医師 コラム No.93
2019/11/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.227」2019年12月号掲載)

「『お酒』の話-その1』

もうすぐ年末です。この季節は忘年会に皆で集まりお酒を飲む習慣があるように、正月、節分、月見に花見、各種お祭り、祝賀会や結婚式、歓送迎会など、日本では事あるごとにお酒の席が設けられ、人々が交流を図る文化があります。世界でもメソポタミア(現在のイラクの一部)や中国では5千年以上前に既にビールやワイン、ハチミツ、果実や米のお酒が作られていたことがわかっています。おそらく古代ではお酒は宗教的儀式や薬としての役割も大きかったと考えられていて、今でも御神酒(おみき)としてその名残りが見られます。

 健康の上ではお酒はどのような立場なのでしょうか?「酒は百薬(ひゃくやく)の長(ちょう)」ということわざもあり、適量のお酒は健康にも良いと昔から言われてきましたが実際はどうなのでしょう?
 厚生労働省のe-ヘルスネットというホームページにも示されているように、WHO(世界保健機関)の評価では、飲酒は口腔・咽頭・喉頭・食道・肝臓・大腸のがんおよび女性の乳がんの原因となるとされています。これまでの疫学的研究の結果からは、飲酒量と危険度の関係は、高血圧や脂質異常症、脳出血や乳がん、肝硬変などの疾患では飲酒量の増加につれてリスクが上昇する傾向があり、「酒は百薬の長」というのは言い過ぎのようです。
 しかし驚くことに、お酒を全く飲まない人よりも、少量飲酒者(1日平均23g=日本酒1合未満)の方が、総死亡数・虚血性心疾患・脳梗塞・2型糖尿病などのリスクはむしろ低くなることがわかっています。しかしそれ以上飲酒量が増えれば、リスクは高くなってゆくという「Jカーブ型」のグラフになるのです。お酒のリラックス効果、つまり血管を緩め、血流を良くし、体温を上げて、血圧を下げる、気分を良くしてその日のストレスを緩和するという効果が、総死亡数や虚血性心疾患・脳梗塞が少量の飲酒でリスクが下がる理由なのかも知れません。これで節度ある飲酒は今でも一定の社会的潤滑油の役割を持っていることにも納得ができそうです。
 逆に「たばこ」には害の方がはるかに多いという認識が強くなっているため規制が段々と厳しくなってきています。「お酒」の害としては、多量の飲酒による健康被害だけでなく、お酒による精神変容作用による暴力、虐待、事故、一気飲みによる急性アルコール中毒死、アルコール依存症に伴う離職や家庭崩壊などの深刻な社会問題を忘れてはいけません。酒やたばこの精神・神経の変容作用はいわゆる「麻薬」にも近い感覚や意識の急激な変化のため、この様なマイナス面があることも事実です。また日本人を含めて東アジアの人はお酒に弱いいわゆる下戸(げこ)の遺伝子を持つ人が多いことも事実で、少しのお酒でも血中にアルコールが分解されて出来たアセトアルデヒドという毒素がたまりやすい人が多いのです。

 この様な下戸の人たちは生まれつきお酒を飲んでも気持ちよく酔えない体質のため、無理強いをすることは出来ません。お酒の席=みんなが楽しめる席ということを忘れずに、少量・適量のお酒で健康にも留意してこの年末の忘年会シーズンを楽しく過ごして行きましょう。


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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会