濵田暁彦医師 コラム No.92
2019/10/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.226」2019年11月号掲載)

「しびれ(痺れ)とは?」

慣れない正座を長時間して足が「しびれ」て立てなくなるという経験は多くの方が持っていると思います。この「しびれ(痺れ)」とは一体何なのでしょうか?
 文学的には『しびれを切らす』→「我慢して待つ」、『歌声にしびれる』→「感動する」という意味で用いることもあります。医学的には、ビリビリまたはジンジンという様な電撃を与えられた様な「異常な感覚」が続いた状態を言いますが、正座のしびれの様に、この異常な感覚に加えて筋肉が正常に動かないといった運動の障害を伴う場合もあり、はっきりとした定義が無いと言うのが現状です。

 神経の圧迫や打撲、神経障害物質の沈着が原因になったり、血流の障害(血液中の酸素低下)が原因になったり、血液中のカルシウム濃度が低下したりと、原因も様々なために病院でも直ぐに原因が特定出来ない場合もあります。特に注意が必要なのは、突然に片方の手と足が同時にしびれ出した場合で、これは脳梗塞などの脳卒中をまず疑うサインと言えます。また糖尿病やアルコール、透析などに伴って徐々に悪化する手足のしびれは全身的な神経の異常のために治療が困難な場合も多いのです。逆に1本の手や足のしびれは、末梢神経というその手や足の1本の神経の障害が原因である可能性が高いため、圧迫をとってあげると治る可能性も高くなります。
 例えば、明け方に一方の手の小指以外の指がしびれる場合、女性のしびれで最も多い「手根管(しゅこんかん)症候群」という病気が考えられます。進行すると親指の付け根の筋肉=母指球が痩せてしまい、物をつまむ動作がしづらくなって行きますので、整形外科や神経内科を受診してきちんと診断して治療する必要があります。最近では短時間で小さな傷だけの手術で済む場合も多い様です。
 その他にも、頬杖(ほおづえ)や肘を曲げて眠った後などに起こる小指と薬指のしびれ=「肘部管(ちゅうぶかん)症候群」や、腕枕をした時などに起こる手の甲側のしびれや指が伸ばしにくくなる「橈骨(とうこつ)神経麻痺」(*Saturday night palsy:土曜夜の麻痺:週末に恋人を腕枕して眠ると起こり易い麻痺の意味の艶っぽい英語表現)、交通事故などでダッシュボードに膝を打ち付けた後など膝の障害で足の甲側がしびれて足が垂れた状態となり、足先を持ち上げられなくなる「腓骨(ひこつ)神経麻痺」などが有名です。

 腓骨神経麻痺は長期の寝たきりやゴムのきついハイソックス、足組みなどで膝下の外側の腓骨(ひこつ)骨頭(こっとう)が長時間圧迫されることでも起こる場合があるので注意が必要です。またネズミを使った実験で、糸でネズミの足を縛って一旦血流を止めた後に再び血流を再開することで、低酸素状態から回復した際に発生した活性酸素が感覚神経のTRPA1というタンパク質を介してしびれの感覚を起こすことが確認されています。今後このTRPA1を阻害する薬が開発されて、しびれや痛みの新たな治療薬になることが期待されています。


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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会