濵田暁彦医師 コラム No.91
2019/09/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.225」2019年10月号掲載)

「潰瘍性大腸炎:UC=Ulcerative Colitisの治療の進歩」

潰瘍性大腸炎:UCという病気をご存知でしょうか? 現職の安倍総理も患っていると言われ、今や日本国内の患者数は20万人以上に増加している原因不明の難病です。炎症性腸疾患:IBDの一種であり、自己免疫疾患の一種でもあります。自己免疫の異常で繰り返し腸炎を起こす病気で、ひどい時には下痢・血便を伴う腹痛が数十分おきに襲って来るため、仕事も勉強も集中して出来なくなってしまいます。
 これまでは欧米で多く、日本を含めたアジアでは少ないと言われていましたが、生活の欧米化のためでしょうか、日本でも年々患者さんの数は増加しています。またこれまでは若者に発症する病気という認識でしたが、最近では若者だけでなく高齢者にも発症することがしばしば経験される様になってきました。一時は病状の悪化で自ら総理大臣を辞任した安倍さんも、新たな治療法で病気を上手くコントロール出来るようになり、再び激務をこなせる様になりました。
 
 この事からもわかる様にUCに対する治療法は年々進歩しています。自己免疫疾患と考えられる病気は多くの種類が有り、このUC以外では、日本国内に70万人以上もの患者さんがいる関節リウマチ:RAが有名です。自己免疫疾患は原因が不明ですが、治療法に関しては「暴走する免疫細胞を抑える」点で共通しており、様々な薬や治療法が飛躍的に進歩しています。病気を持っていても安倍総理の様にほぼ健常人と同様の社会生活が送れる患者さんも増えて来ています。

 これには増え続ける患者さんを何とか治そうという様々な研究の積み重ねのおかげもあります。UCの治療薬は、以前はメサラジンという飲み薬1種類と、ステロイド薬しか有りませんでしたが、その後研究が進むにつれて様々なタイプのメサラジン製剤が開発され、ステロイド薬も注腸や座薬、泡タイプの薬が作られ治療法が増えて来ました。また、透析のように血液を一旦抜いて免疫を担う白血球成分のみを除去するという大掛かりな治療法「白血球除去療法」や、移植治療で使われていた免疫抑制剤をUCにも使う治療法が開発されるなどのおかげで、重症のUCでも大腸全摘術を回避できるようになって来ました。

 更に最近では関節リウマチRAの治療でも活躍する「抗TNFα抗体製剤」を皮切りに、炎症に関わる特定の分子を標的とした「抗体製剤」や「分子標的薬」といった新薬が次々と開発されており、治療法の選択肢が格段に増えて来ました。 このUCや関節リウマチRAで成果を上げた治療法は、もっと患者さんの数の少ない他の自己免疫疾患にも応用されて行き、医学の発展に役立っているのです。



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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会