濵田暁彦医師 コラム No.90
2019/08/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.224」2019年9月号掲載)

「お腹痛の話〜炎症性腸疾患(IBD)と過敏性腸症候群(IBS)の違いとは?~」


 お盆の最中に大きな台風が通過しましたが、今年も無事に宮津の花火・灯籠流しが執り行われました。お盆が終わりご先祖様たちがそれぞれの場所に帰って行かれ、それと共に都会で生活をする人たちも故郷から自分たちの場所へと帰って行きました。一瞬賑わった丹後の街々も、何事もなかったかの様にまた元通りの静けさへと落ち着きました。
 毎年病院はお盆の間も通常通りの診療を行っていますが、この期間は普段仕事で忙しい若い人たちも休みを利用して病院への受診が増えます。いつもは高齢の方が多いのに、この時期は特に若い方の大腸内視鏡検査が目立ちました。

 若い人たちの間で「お腹痛」と言えば、前回お話しました過敏性腸症候群IBS=Irritable(過敏な) bowel(腸) syndrome(症候群)の患者さんが多いのですが、同じ様な腹痛と下痢を繰り返す症状の中には炎症性腸疾患IBD=Inflammatory(炎症の) bowel(腸) disease(疾患=病気)という原因不明の慢性腸炎の患者さんも少なからずおられます。
 炎症性腸疾患IBDは、主に潰瘍性大腸炎UC=Ulcerative(潰瘍性) colitis(大腸炎)とクローン病CD=Crohn’s(クローン氏の見つけた) disease(病気)という原因がいまだに不明の2大疾患を含む呼び方です。この様にIBDとIBSは症状は似ていても全く違う病気なのですが、似ているためにこの2つを混同してしまい「過敏性腸炎(×)」と間違えた言い方をする人がいるほどです。
 
 さらに説明すると、IBS(過敏性腸症候群)は「炎症」では無くて内視鏡で腸を観察しても全く異常を認めません。見た目や検査では異常が無いのにしょっちゅうお腹痛が起こるため「機能性疾患」と考えられているのに対して、潰瘍性大腸炎などのIBDは、内視鏡検査や他の画像検査、病状が悪化した場合には血液検査にも目に見える異常が見つかる病気で、熱・赤み・痛み・むくみを伴う生体の部分的な障害=つまり「炎症」が腸の中に実際に起きている「器質性疾患」であるところがIBSとは決定的に違うところです。
 また潰瘍性大腸炎UCやクローン病CDの「炎症」は、細菌やウイルスなどによって引き起こされる急性の感染性腸炎とも異なり、「自己免疫性疾患」と言って、本来細菌やウイルスから自分の体を守る働きをしている「免疫」の細胞が過剰に働いてしまって、逆に自分自身を攻撃するタイプの病気です。

 「自己免疫性疾患」は「膠原病」とも呼ばれて多くの種類の病気がありますが、「免疫」という本来生き物の体に備わった非常に複雑な防御のシステム自体がまだ十分には解明されていないために、これはまた別の機会にお話しすることとして、次回もこのIBD(炎症性腸疾患)についてさらにお話しをさせていただきます。


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執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定医、専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本ヘリコバクター学会認定医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会