濵田暁彦医師 コラム No.84
2019/02/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.219」2019年3月号掲載)

「日本の便秘治療が大転換!」

ある調査では日本人の30%もの人が便秘を自覚しているそうです。しかしこれまでの日本の医者は便秘を病気とは考えて来ませんでしたし、医学教育でも便秘を教えることは全くありませんでした。つまり医者も一般人も便秘に関しては同じレベルの知識しか無かったのです。しかし最近2017年の秋日本でも「慢性便秘のガイドライン」が刊行されました。また便秘の患者さんは心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントを起こしやすく、便秘のない人より寿命が短いことも解ってきて便秘は危険な病気に繋がりやすいという認識が認知されつつあります。

 薬局で買う薬のことをOTC薬と言いますが、OTC薬の便秘薬は漢方の大黄(ダイオウ)が入ったものか、西洋薬のセンナの入ったもの、あるいはアロエの入ったもので、どれも「刺激性下剤」という種類で腸を刺激して蠕動運動を活発にさせる薬です。またこれまで病院で処方される便秘薬も、同じく刺激性下剤のセンナかまたは「酸化マグネシウム」という便の水分を増やして便を柔らかくする緩下剤の2種類しかありませんでした。

 しかしセンナや大黄などの刺激性下剤は耐性や依存性が強く、毎日長期間の服用を続けると徐々に効きが悪くなり、1回に1錠や2錠では効かなくなり、5錠6錠とどんどん数が増えて行き、ひどい場合には50錠〜100錠も飲んでいる人も出てきます。それでも更に段々と腸が動かなくなり便秘がますますひどくなるという悪循環に落ち入り、最悪の場合腸管無力症と言って腸が全く動かなくなり大腸を全て切り取る手術(大腸全摘術)までしなければならなくなってしまいます。もう一つの便秘薬酸化マグネシウムは便に水分を含ませてスムーズに排便をうながす安価な薬ですが、高齢者では腎臓の働きが悪い人も多いため、腎不全の方が知らず知らず高マグネシウム血症となって意識障害や不整脈などを起こして死亡してしまう危険があるのです。

 しかしこれまではこの2種類の便秘薬しか実際には使え無かったのですが、最近になって欧米の一歩進んだ便秘治療を参考に日本でもようやく「慢性便秘のガイドライン2017」が発刊されました。欧米の便秘治療は、現在ではマグネシウムよりも危険の少ない緩下剤の「ラクツロース(糖類下剤)」と「塩素イオン分泌刺激薬」が主役なのですが、日本でも最近になって各種緩下剤が一気に発売されてきました。糖類下剤の「ラクツロース(ラグノス®︎)」や塩素イオン分泌刺激薬の「ルビプロストン(アミティーザ®︎)」「リナクロチド(リンゼス®︎)」、浸透圧下剤のPEG(ポリエチレングリコール)(モビコール®︎)などです。

 今後はこれらの新しい緩下剤を基本として毎日服用し便の硬さを調節した上で、刺激性下剤は3日から5日に1回ほどの頓服使用にとどめ副作用を起こさないというガイドラインに沿った正しい便秘治療が患者さんにも医者の間にも浸透して行くことと思われます。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会