濵田暁彦医師 コラム No.81
2018/11/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.216」2018年12月号を改訂)

「がんとは何か?」-その14- がん性疼痛と麻薬による鎮痛治療

「がん」は痛いというイメージが一般的にあると思います。確かに進行したがんは発生した臓器から外にまで広がる「浸潤(しんじゅん)」を起こしたり、他の部位に「とびひ」する「転移(てんい)」を起こし、これが腸閉塞・腹膜播種、胆管狭窄・尿管狭窄、胸水・腹水、神経浸潤や骨転移などとなって様々な「痛み」を生じます。

 またがんの治療に伴う痛みというものもあります。例えば手術の傷の痛みや抗がん剤・放射線治療による副作用で口内炎、腸炎、神経障害等の痛みを感じることがあり、これも元々がんがあったが故の痛みです。さらに「初期のがんは痛みが無い」ことが特徴ですが、「早期がん」と告知されることでストレスや不安から胃痛や頭痛、不眠などの症状を引き起こすことはよくあります。

 これらがんの早期から進行期、末期まで各段階に渡り様々な痛みがあるのですが、これらは全て「がん性疼痛」と考え治療の対象になるのです。「がんになってモルヒネを使う様になるともう末期だ」と考える人も多い様ですが、これも一般に多い誤解です。がんのどの段階であっても患者さんが「痛みを感じる」のであればQOL(生活の質)を高めるために痛みの治療を行う必要があるのです。

 がん性疼痛の治療法としては、WHO(世界保健機関)方式のがん性疼痛治療法が有名で、これには痛みの強さに応じて3段階の除痛ラダー(段階)の順番に行うという方法です。1段階目は非麻薬性の鎮痛薬の使用を、2段階目は弱い麻薬の使用を、3段階目は強い麻薬の使用を行うというものですが、やはり「モルヒネ」に代表される強い麻薬を用いる事が、がんによる強い痛みに対しては最終的に最も効果的で重要です。

 そのためまずは「麻薬」による痛み治療への偏見をなくすことが重要です。残念ながら日本では麻薬に対する偏見が未だに強く、世界の他の国に比べて麻薬によるがん性疼痛治療が遅れています。「効果の不十分な少ない麻薬の量で痛みを我慢しながら闘病生活を送る」という不十分な治療がまだ多くの患者さんに行われているため「がんは痛い」というイメージが未だに強く残っているのだと思います。

 十分な量の麻薬を用いて除痛を行い、さらにその他の鎮痛補助薬を使用する、あるいは骨への転移に対しては放射線治療を行うなど様々な方法を駆使することで「がんでも痛みが無くて、楽になることが可能なのだ」ということが一般的に認識されれば、「がんになっても痛みを取る治療がちゃんとあるんだ」という安心感が広がるのではないでしょうか。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会