濵田暁彦医師 コラム No.78
2018/08/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.213」2018年09月号を改訂)

「がんとは何か?」-その11-がん検診でどれだけがんが分かるのか?

厚生労働省から発表されている各年代の死因順位表を見てみると、40代から80代の死因の1位は悪性腫瘍つまりがんであることが分かります。そのため40歳から90歳までのみなさんはどれだけ早くがんを発見するかが自分の健康を保つ上で重要です。

 現在症状の無い人は、がんの1次検診で「スクリーニング=選別」を受けてがんの可能性が高い人が選ばれます。次いで2次検診で精密検査を行ってがんの有無を調べるのです。しかし「がん検診」の推奨度やその根拠について詳しく知って理解している人は少ないのが実情です。がん検診は各市町村が行う対策型検診(住民検診)と人間ドックなどのように個人的に受ける任意型検診がありますが、特に住民検診は税金を使うため、厚生労働省が支援して国立がん研究センターが中心となって発表している科学的な根拠や推奨度を明記した「ガイドライン」に沿って行われます。そこで目的とされているのは、集団全体のがん死亡率を減少することと、検査を受けることで起こる不利益(合併症や副作用)をできるだけ少なくすることです。
 
 数多くの論文を吟味してこれらの目的を満たすと認定されたがん検診は、現在では、男女ともにかかる危険のある肺がん・胃がん・大腸がんと、女性特有の乳がん・子宮頚がんの5種類だけです。その他のがん、例えば前立腺がんではPSAというがんマーカーを血液検査で測定することが1次検診に適していると期待されていますが、現時点では死亡率を減少させる十分な根拠に乏しいという判定です。
 また最近までは、胃がんの検診には胃X線検査=胃透視検査が推奨されて来ましたが、最近になって胃内視鏡検査も死亡率減少効果があるという論文が出てきたために、ガイドラインが変わり胃内視鏡検査も推奨されるようになり胃内視鏡検診を行う市町村も出てきました。

 つまりガイドラインは、専門科が決まった方法に沿って多くの論文を判定して作るもので、時代と共に変わって行きます。また論文で十分な証拠が少ないがん、例えば膵臓がんや胆道がん、悪性リンパ腫でがん検診を行うということは未だ推奨されるに至っていないのが現状です。
 この様にがん検診は実はとても難しい医学や統計学の検証を経ているため、正しく理解することは実際にはかなり困難です。特に勘違いし易いのは、腫瘍マーカーではがんがあるかどうかの判断ができないということや、がん検診だけで全てのがんが見つかる訳ではないということです。がん検診を受けた上で更に喫煙や飲酒、食事、運動、睡眠や排便習慣などの生活習慣を改善することが、いろいろながんの抑制につながる可能性があり、今後もがんを抑制し早期発見するための正しい方法が徐々に解明されて行くことが期待されています。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会