濵田暁彦医師 コラム No.74
2018/04/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.206」2018年05月掲載)

「がんとは何か?」-その10-「がんの余命とは?生存率とは?」


 ドラマや映画では、末期がんの患者さんに医者が「余命(よめい)3ヶ月です」と宣告する場面をよく見かけます。

 「余命」とは「今から後どれだけの時間生きるか」という意味ですが、医者は目の前の患者さんがあとどれだけ生きられるかを本当に正確に予測できるのでしょうか?その答えは「いいえ」です。そのため私は「実際には余命は正確にはわかりません」とお答えします。
 末期癌の状態で見つかった場合「治療が効かなかったり副作用が強ければ数週間かもしれませんし、治療が効けば1年以上かもしれません。それほど個人差があります。」という様に説明しています。

 もともと「余命」というのは厚生労働省が日本中で統計をとり、健康な人も病気の人も全てを含めて各年齢の人が亡くなるまでの平均の時間を計算し発表しているものです。
 0歳の生まれたての赤ちゃんの平均余命の事を「平均寿命」と言い、平成28年は男の平均寿命が80.9年、女が87.1年と発表されました。しかし「80歳の男の人は平均余命があと1年も無いのか?」というとそうではなくて、80歳の男の平均余命は8.9年で、80歳の女の平均余命は11.8年なのです。

 難しくて良く解らなくなってきましたね。しかし実際80歳まで生きてこられた人はさらに平均すると8〜11年ほども生きられるということが統計の調査で分かっているのです。明日亡くなるかもしれない病気の80歳の方もいれば、あと20年以上生きる元気な80歳の方もいるのです。つまり統計はあくまで全員の平均を表しているだけであって、やはり1人1人の正確な余命を知ることはできないのです。

 がんの患者さんでは余命よりも「予後(よご)」という医学用語をよく使います。病気の将来的な見通し、治りやすさの目安のことを「予後」と言います。がんなら病期=ステージの数字が大きくなるほど治りにくくなり「ステージⅠなら予後が良く治り易いが、ステージⅣなら予後不良で治りにくい。」と表現します。
 さらにこれまでの色々な種類のがん患者さんの統計を集めてグラフにした「生存曲線」と言うグラフを見れば、「○○がんのステージ△の場合であれば、半数50%の患者さんが生きているのは何ヶ月後(生存期間中央値)」だとか「1年後や5年後に何%の患者さんが生きているか(1年生存率、5年生存率)」という統計調査の結果を知ることが可能です。

 しかしいくら1年生存率が分かっても目の前のこの患者さんが1年後に生きておられるか?ということは神様でもない医者には結局分からないのです。むしろ「ご飯が食べられなくなってきた」とか「呼吸が苦しくなってきた」「おしっこが出なくなってきた」といった症状を見ることで、その患者さんの残された体力が少なくなってきたことを感じ取り、「もう残された時間はわずかです」というように判断しているのが実情なのです。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。様々な不定愁訴に対しても、総合内科と漢方を融合させた治療を実践中。