濵田暁彦医師 コラム No.70
2017/12/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.202」2018年01月号を改訂)

「年の初めと健康への願い」

新年明けましておめでとうございます。昔の人々は1年の始まりに五穀豊穣をもたらす神様への感謝と家族の健康を願いました。

お正月は新たな年に「歳神様(としがみさま)」をお迎えする行事です。歳神様は「山の神」でもあり、春に里に降りて来る「田の神」でもあります。「門松」は山から降りて来る神様を迎える目印で、「しめ縄」は田の神から授かった稲魂(いなだま)で作られた神様と現世を隔てる結界です。「鏡餅(かがみもち)」は歳神様の魂の形を模したもので、鏡開きの日に皆で食べることによって、家族の健康を願います。「お年玉」も「歳神様の魂=歳魂(としだま)」の意味で供えたお餅をお下がりとして子供たちに食べさせたことに因みます。

次に正月の料理と言えば御節(おせち)料理ですね。もともとは収穫物に感謝を込めて、その土地で採れたものを神様にお供えしました。暮らしや食文化が豊かになると山海の幸を盛り込んだご馳走となりました。そのご馳走は「めでたさを重ねる」という意味で重箱に詰められ、素材や料理にはそれぞれに込められた意味があります。一の重には祝い肴と口取りを詰めます。「数の子」はニシンの腹子で子孫繁栄を願い、「田作り」は片口イワシの稚魚を干したもので五万米(ごまめ)とも言い稲の豊作を願います。「黒豆」はマメに勤勉に働けるように、「たたきごぼう」は地中深く根が張ることから家の基礎が堅牢であることを願います。二の重には海の幸の焼き物が入ります。「ぶり」は出世魚で出世を願い、「鯛」はめでたいとの語呂合わせ、「海老」は長いひげや曲がった腰から長生きの象徴なのです。三の重は山の幸を中心に家族が仲良く結ばれるように煮しめを入れます。「里芋」「八つ頭」「くわい」は子芋がたくさん付くことから子孫繁栄を願います。与(四)の重は日持ちする酢の和え物です。水引をかたどった「紅白なます」は平安平和を願います。

次にお正月が一段落した1月7日の人日(じんじつ)の節句には、胃に優しい七草粥を食べます。せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろの七種です。それぞれの薬草は胃腸を健康にし食欲を増進させる効果があると言われています。

最後に元日の夜または2日の夜に見る「初夢」も新年の縁起物です。昔から良い夢を見るには、めでたい「七福神」の乗った宝船の絵に「長き夜の遠の眠りの皆目覚め波乗り船の音の良きかな」という回文(かいぶん=前から読んでも後ろから読んでも同じ文)の歌を書いて枕の下に入れると良いと言われました。初夢に見ると縁起が良いものは、一富士(いちふじ)二鷹(にたか)三茄子(さんなすび)が有名ですが、それに四扇(しおうぎ)五煙草(ごたばこ)六座頭(ろくざとう)と続いて、富士と扇は末広がりで子孫繁栄商売繁盛を、鷹と煙草の煙は上昇するので運気上昇を、茄子と座頭は毛が無いので「怪我ない」と洒落て家内安全を願うのです。

今のような医療がなかった時代、神様や自然の作物、様々な縁起物を担いで、健康を願い生きる活力を奮起したのでしょうね。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会