濵田暁彦医師 コラム No.69
(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.201」2017年12月掲載)

「フレイル」とは〜その1

前回まで遺伝子やDNAといった少し専門的な話が続いたので、今回から一旦この話題を離れ「がん」については今後またお話します。

今回から取り上げるのは「フレイル」という今後の超高齢化社会を見据えたお話です。まず「フレイル」という言葉を知っておられるでしょうか?英語の「Frailty=フレイルティ」から作られた日本語の造語ですが、元々のFrailtyの意味は「もろさ、はななさ、弱さ、脆弱、虚弱、老衰」などで、2014年に日本老年医学会から新たに「フレイル」という訳語が提唱されました。「フレイル」は高齢者の生理的予備能が徐々に低下して体や心が弱って行く過程で、「健康」と「寝たきり=要介護状態」の中間の状態だと定義されます。具体的には、身体的フレイル、精神心理的フレイル、社会的フレイルの3つに分けられます。

まず身体的フレイルは、高齢になるに従って筋肉の減少、筋力の低下が起こり、転倒や嚥下障害から骨折や誤嚥性肺炎に至り、この繰り返しによってやがて寝たきり=要介護状態に陥ってしまう老化の過程を表します。寝たきりになる前の筋肉減少や嚥下障害の早い段階で積極的に医療および社会的に介入することで、再び健康な状態へと回帰することが「フレイル」への介入の目的です。

ここで老化に伴う筋肉の減少のことを特に「サルコペニア」と言い、また老化に伴う筋肉や骨など移動機能に関わる運動器疾患群の事を「ロコモティブシンドローム」いう言葉で表現することを付け加えておきます。これらの言葉は密接に関係がありますが「身体的フレイル」は全てを統括できる言葉なのです。さらに認知機能障害(いわゆる「認知症=ぼけ」)や老年性のうつなどの精神心理的フレイルも大きな社会問題となっています。

実際私の外来でも、「筋肉が減って体重が落ちふらつきが出ます。食欲もわかず、眠れず、物忘れもするようになって来ました。」と訴えられるご老人は非常に多いのです。これまでは「年のせいだから仕方が無い」といわばあきらめていたこのような状態も、運動によるリハビリや食事生活指導による栄養改善、睡眠改善を積極的に行い、漢方薬やその他の薬を上手に使うことで、「また食欲が出てきました。足腰も少し強くなりふらつきもなくなりました。睡眠もとれるようになってきました。」と言われる様に改善が見られるようになってきました。

つまり「フレイル」という言葉の意味=概念を知りこの様な状態の方に対処することで、高齢者の健康寿命を伸ばしQOL(生活の質)を改善することができるのです。「フレイル」の概念が浸透することで寝たきりのご老人が減り、より理想的な超高齢化社会を迎えることが期待されます。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。様々な不定愁訴に対しても、総合内科と漢方を融合させた治療を実践中。