濵田暁彦医師 コラム No.69
2017/11/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.201」2017年12月号を改訂)

「フレイル」とは〜その1

前回まで遺伝子やDNAといった少し専門的な話が続いたので、今回から一旦この話題を離れ「がん」については今後またお話します。

今回から取り上げるのは「フレイル」という今後の超高齢化社会を見据えたお話です。まず「フレイル」という言葉を知っておられるでしょうか?英語の「Frailty=フレイルティ」から作られた日本語の造語ですが、元々のFrailtyの意味は「もろさ、はななさ、弱さ、脆弱、虚弱、老衰」などで、2014年に日本老年医学会から新たに「フレイル」という訳語が提唱されました。「フレイル」は高齢者の生理的予備能が徐々に低下して体や心が弱って行く過程で、「健康」と「寝たきり=要介護状態」の中間の状態だと定義されます。具体的には、身体的フレイル、精神心理的フレイル、社会的フレイルの3つに分けられます。

まず身体的フレイルは、高齢になるに従って筋肉の減少、筋力の低下が起こり、転倒や嚥下障害から骨折や誤嚥性肺炎に至り、この繰り返しによってやがて寝たきり=要介護状態に陥ってしまう老化の過程を表します。寝たきりになる前の筋肉減少や嚥下障害の早い段階で積極的に医療および社会的に介入することで、再び健康な状態へと回帰することが「フレイル」への介入の目的です。

ここで老化に伴う筋肉の減少のことを特に「サルコペニア」と言い、また老化に伴う筋肉や骨など移動機能に関わる運動器疾患群の事を「ロコモティブシンドローム」いう言葉で表現することを付け加えておきます。これらの言葉は密接に関係がありますが「身体的フレイル」は全てを統括できる言葉なのです。さらに認知機能障害(いわゆる「認知症=ぼけ」)や老年性のうつなどの精神心理的フレイルも大きな社会問題となっています。

実際私の外来でも、「筋肉が減って体重が落ちふらつきが出ます。食欲もわかず、眠れず、物忘れもするようになって来ました。」と訴えられるご老人は非常に多いのです。これまでは「年のせいだから仕方が無い」といわばあきらめていたこのような状態も、運動によるリハビリや食事生活指導による栄養改善、睡眠改善を積極的に行い、漢方薬やその他の薬を上手に使うことで、「また食欲が出てきました。足腰も少し強くなりふらつきもなくなりました。睡眠もとれるようになってきました。」と言われる様に改善が見られるようになってきました。

つまり「フレイル」という言葉の意味=概念を知りこの様な状態の方に対処することで、高齢者の健康寿命を伸ばしQOL(生活の質)を改善することができるのです。「フレイル」の概念が浸透することで寝たきりのご老人が減り、より理想的な超高齢化社会を迎えることが期待されます。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会