濵田暁彦医師 コラム No.66
(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.198」2017年9月掲載)

「がんとは何か?」その3「遺伝子はどこにあるのか?」

「がん」を知る上で「遺伝子」とは何か?を知ることは重要です。

遺伝子の話をすると、どうしても科学のかなり専門的な難しい話になってしまいますが、「遺伝子」や「DNA」の発見というのは生命科学の分野でも最大級の発見で、その後の科学や医学の発展に計り知れない影響を与えています。今日私達は生活のさまざまな所で知らず知らずの内にもこのDNAや遺伝子から応用した農業や工業、医学技術の恩恵を多大に受けています。

ところで、この両親から受け継いで1人1人の細部の特徴を決めている「体の設計図=遺伝子」は一体どこにあり、どのようなものなのか?これは昔から科学の謎でした。今から私は、多くの科学者達が過去に様々な苦労や競争を行って、その末に今の医療を支える偉大な発見が数多くされてきた「細胞の分子生物学」の進歩の課程をなるべく解りやすくお話しいたします。

1865年に当時のオーストリア帝国(現在のチェコ・モラヴィア)の修道士メンデルが、エンドウ豆の交配実験から親の特徴が一定の法則に従って子孫に受け継がれて行く有名な遺伝の法則「メンデルの法則」を報告しました。その後その特徴を伝える未知の要素は、1909年にデンマークのヨハンセンによってドイツ語で「Gen(ゲン)」と名付けられ、英語では「gene(ジーン)」、日本語では「遺伝子」と呼ばれるようになりました。また1903年にアメリカの生物学者のサットンはバッタの生殖細胞の観察から「遺伝子は生殖細胞の染色体(センショクタイ)上にあるのではないか」と言うことを予言しました。

「染色体」は、体を作る約37兆個とも言われる細胞全ての中央にある「核」という袋の中で、細胞分裂の際に観察される数本の棒状の物質のことです。染色体の数は生物の種類によって違っていて、ヒトでは23対(46本)、チンパンジーなど類人猿では24対(48本)、少ないものではショウジョウバエの4対(8本)、多いものでは金魚の52対(104本)などと、生物の種類によってかなりの差があります。またヒトでは通常体細胞の核内には23対46本の染色体があるのに対して、精子や卵子といった生殖細胞では半分の23本なのです。そして精子と卵子が結合すると23対46本の受精卵となり、本来の染色体の数に戻るのです。この染色体に父親の遺伝子と母親の遺伝子がそれぞれ含まれていて、どちらの素質も子供に遺伝する事がわかって来たのです。その後1922年にモーガンらのグループがショウジョウバエの交雑実験から、ショウジョウバエの4対(8個)の染色体の上に50個の遺伝子があることを発表し「遺伝子が染色体上にある」ことがようやく明らかになったのです。

次回はこの染色体の上に、はたして「どのように」遺伝子があるのか?という疑問についてお話を進めて行きましょう。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。様々な不定愁訴に対しても、総合内科と漢方を融合させた治療を実践中。