濵田暁彦医師 コラム No.66
2017/08/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.198」2017年9月号を改訂)

「がんとは何か?」その3「遺伝子はどこにあるのか?」

「がん」を知る上で「遺伝子」とは何か?を知ることは重要です。

遺伝子の話をすると、どうしても科学のかなり専門的な難しい話になってしまいますが、「遺伝子」や「DNA」の発見というのは生命科学の分野でも最大級の発見で、その後の科学や医学の発展に計り知れない影響を与えています。今日私達は生活のさまざまな所で知らず知らずの内にもこのDNAや遺伝子から応用した農業や工業、医学技術の恩恵を多大に受けています。

ところで、この両親から受け継いで1人1人の細部の特徴を決めている「体の設計図=遺伝子」は一体どこにあり、どのようなものなのか?これは昔から科学の謎でした。今から私は、多くの科学者達が過去に様々な苦労や競争を行って、その末に今の医療を支える偉大な発見が数多くされてきた「細胞の分子生物学」の進歩の課程をなるべく解りやすくお話しいたします。

1865年に当時のオーストリア帝国(現在のチェコ・モラヴィア)の修道士メンデルが、エンドウ豆の交配実験から親の特徴が一定の法則に従って子孫に受け継がれて行く有名な遺伝の法則「メンデルの法則」を報告しました。その後その特徴を伝える未知の要素は、1909年にデンマークのヨハンセンによってドイツ語で「Gen(ゲン)」と名付けられ、英語では「gene(ジーン)」、日本語では「遺伝子」と呼ばれるようになりました。また1903年にアメリカの生物学者のサットンはバッタの生殖細胞の観察から「遺伝子は生殖細胞の染色体(センショクタイ)上にあるのではないか」と言うことを予言しました。

「染色体」は、体を作る約37兆個とも言われる細胞全ての中央にある「核」という袋の中で、細胞分裂の際に観察される数本の棒状の物質のことです。染色体の数は生物の種類によって違っていて、ヒトでは23対(46本)、チンパンジーなど類人猿では24対(48本)、少ないものではショウジョウバエの4対(8本)、多いものでは金魚の52対(104本)などと、生物の種類によってかなりの差があります。またヒトでは通常体細胞の核内には23対46本の染色体があるのに対して、精子や卵子といった生殖細胞では半分の23本なのです。そして精子と卵子が結合すると23対46本の受精卵となり、本来の染色体の数に戻るのです。この染色体に父親の遺伝子と母親の遺伝子がそれぞれ含まれていて、どちらの素質も子供に遺伝する事がわかって来たのです。その後1922年にモーガンらのグループがショウジョウバエの交雑実験から、ショウジョウバエの4対(8個)の染色体の上に50個の遺伝子があることを発表し「遺伝子が染色体上にある」ことがようやく明らかになったのです。

次回はこの染色体の上に、はたして「どのように」遺伝子があるのか?という疑問についてお話を進めて行きましょう。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会