濵田暁彦医師 コラム No.63
2017/05/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.195」2017年6月号を改訂)

「鼻から耳に抜ける」~「耳抜き」の話

前回は落語を例に出し「目から鼻に抜ける」お話をしました。

人には「鼻涙管(ビルイカン)」と呼ばれる管があり、鼻涙管が詰まると涙が止まらなくなり、目やにが常にたまる状態になります。また詰まった鼻涙管の感染症「涙嚢炎」を起こすこともあります。新生児の場合は点眼やマッサージで改善することが多く、大人の場合はチューブ留置や手術が必要になることが多いです。

次に鼻から耳に抜ける「耳管:ジカン」についてのお話です。みなさんも車や電車でトンネルに入った時やエレベーターが急速に上がり下りする時に「耳が詰まった感じ」や「キーンと音がする」などの症状を感じた経験があるのではないでしょうか。また飛行機が上昇下降する時には上の症状に加えて「耳が痛む」事もあります。これは周りの気圧が急に変化した時、耳の中の中耳腔:チュウジクウ(鼓室:コシツとも言います)と鼓膜:コマクの外の外耳道の間で圧力の差ができて、鼓膜が圧の高い方から低い方に押されるからです。ダイビングで水中深く潜ったり浮上する時にはものすごく高い水圧の変化が起きるためにある対処法を行わないと鼓膜が破れてしまいます。

この対処法とは「耳抜き」と呼ばれるもので、耳の中の中耳腔と鼻の中の鼻腔をつなぐ「耳管」を開いて、体外の圧力と内耳腔の圧力を同じにする方法です。最も簡単なのはつばをごくりと飲み込む動作で、正式にはフレンツェル法と言われ、あめやガムをかんでつばを多く出してごくりと飲み込むだけです。これはつばを飲み込む時に口蓋帆張筋:コウガイハンチョウキンという筋肉が収縮して耳管を広げるからです。またあくびをする時にもこの口蓋帆張筋が収縮するのであくびも「耳抜き」には有効ですが、意図的にあくびをすることは難しいですね。

次ぎにダイバーの人達がよく行うバルサルバ法という耳抜きの方法で、鼻をかむ時のように鼻腔内の圧力を上げてその圧力で耳管を開く方法です。鼻を手でつまんでふさぎながら鼻から息を出そうとすると鼻の中の圧力が高まって上手くできます。しかしこのバルサルバ法は強くしすぎたり、何回もしすぎると耳管の粘膜がむくんでしまいだんだんと耳管が広がらなくなる恐れがあるために、プロのダイバーの様に練習と経験が必要です。

また、この耳管が詰まってしまうと上手く耳抜きが出来ません。花粉症や風邪、鼻炎などの時は鼻の粘膜が浮腫でむくんでいるために耳管が詰まりやすく、急な気圧の変化に対応できません。この様な症状がある場合は飛行機やダイビングなどを避けるか、しっかりと治療をしながら行う必要があります。正しい知識で、飛行機の旅、ダイビングを楽しみましょう!

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会