濵田暁彦医師 コラム No.60
2017/02/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.192」2017年3月号を改訂)

「人が『死別』と直面するとき」ーその2

前回ご紹介した『はなちゃんのみそ汁』の様に、がんの告知、余命宣告、不治の病との闘い、肉親との死別というテーマはこれまでにも数多くの実話が本やドラマ、映画となり、その度に多くの人の涙を誘って来ました。

 私は消化器内科医という仕事柄、がんの患者さんと接することは日常的であり非常に多いのですが、ひと昔前まではがんの告知は「患者さんがショックで生きる気力を失うから。」との理由であまり行われなかったようです。胃がんでも胃潰瘍などと「ウソ」を言って手術が行われ、何を点滴されているか知らされないまま抗がん剤が点滴され、自分ががんの終末期だと知らされず十分な緩和ケアも受けられず苦しむ患者さんが多かったのです。

 患者さんは治療をしているのに良くならないと、医療者や家族への不信感がつのり、疑心暗鬼に陥って精神的にも苦痛が増してゆきます。伊丹十三(いたみじゅうぞう)監督の「大病人」という映画の前半では、この様な旧来の日本の終末期医療の模様が描かれていて反面教師になります。

 しかし今ではがんの告知をすることがむしろ一般的になってきました。これは患者さん自身が自分の病気を正しく知り、どのような治療を受けるか、または受けないかを選択し、残された人生最後の時間を自分で決めること、そして医療者はそれをサポートすることが最も重要な役割だというように時代と共に考え方が変わってきたからです。

 しかし医者も人の子、がんの告知をし、患者さんの終末期の苦痛を正面から受け止めることは辛くて非常にストレスなことです。がんの告知には経験やコミュニケーション技術の習得が必要です。

 毎週末のように各地で緩和ケアの講習会が行われていて、講習会では様々な医療従事者がロールプレイという方法で、医師役、患者役、看護師役、観察者役などのそれぞれの役(ロール)を交替しながら何度も実際に演じ(プレイし)ながら、患者さんの気持ち、医師や看護師がどの様に声をかけてケアをして行くと良いのかを実際に模擬体験(シミュレーション)する形式をとります。演じた後にはお互いを評価し合いながら、経験と技術、考察を高めて行くという教育方法です。
 
 医療者が患者さんに面と向かってがんの告知をし、その後の信頼関係を保ちながら家族と共にサポートして行く方が、患者さんにとっては何倍も充実した終末期を送ることができると今では身にしみて感じます。

 次回は医療関係者以外からも、終末期患者さんとその家族を支える新たな活動が始まって来ているというお話をいたします。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会