濵田暁彦医師 コラム No.57
(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.189」2016年12月掲載)

「睡眠(すいみん)」の話ーその3

不眠症の治療薬で最もよく使われているのは、ベンゾジアゼピン系(=ベンゾ系)と言われる種類の睡眠薬です。ハルシオンやデパス、レンドルミン、ロヒプノールと言った薬が代表的です。

このベンゾ系の薬は抗不安作用や筋肉の弛緩作用もあるため、不安神経症や肩こりなどの治療にも幅広く使われています。またベンゾ系の薬には超短時間作用型と言って非常に短時間で効果が出て、また短時間で効果が弱まるいわゆる睡眠導入剤として使われるものから、短時間型⇒中間型⇒長時間型という様に多様な薬があるために、患者さんの不眠のタイプ、つまり寝入りが悪いのか、睡眠途中や早朝に目覚めるのかによって、薬の使い分けや同時服用などの治療の選択肢が広いという特徴があります。

しかし、特に長時間効く睡眠剤は、夜中にトイレに起きた時にふらついたり転倒する危険が高まったり、朝起きにくくなったり、日中にも眠気が続き集中力や記憶力が低下するといった恐れが出てきます。

また長期間飲み続けると、薬の量が増えたり、薬を止める時に反動的な副作用が起こる可能性があります。そのため、現在公表されている「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」や「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」に則って適切な診断と治療をする必要があり、また薬を減らして行く方法にも工夫が必要なのです。

不眠症の原因の中には、睡眠時無呼吸症候群やむずむず足症候群、うつ病や夜間頻尿、他の薬の副作用と言った睡眠薬以外の治療も必要な病気を持っている場合もありますので、医師の適切な診断が重要です。

また最近は非ベンゾジアゼピン系薬剤といって、ベンゾ系薬剤より副作用や依存の少ない薬(マイスリー、アモバン、ルネスタ)や、睡眠ホルモンであるメラトニンの薬(ロゼレム)、また覚醒ホルモンであるオレキシンの働きを妨げる事で眠気を誘う薬(ベルソムラ)など、これまでのベンゾ系の薬とは異なる働きをして、眠りと覚醒の日内リズムを改善する薬も登場してきました。

日本人は睡眠薬を必要以上に怖がる傾向があると言われていますが、これらの新種の睡眠薬を用いることでベンゾ系薬剤の副作用を減らした不眠症治療も可能となってきているのです。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。