濵田暁彦医師 コラム No.57
2016/11/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.189」2016年12月号より改訂)

「睡眠(すいみん)」の話ーその3

不眠症の治療薬で最もよく使われているのは、ベンゾジアゼピン系(=ベンゾ系)と言われる種類の睡眠薬です。ハルシオンやデパス、レンドルミン、ロヒプノールと言った薬が代表的です。

 このベンゾ系の薬は抗不安作用や筋肉の弛緩作用もあるため、不安神経症や肩こりなどの治療にも幅広く使われています。またベンゾ系の薬には超短時間作用型と言って非常に短時間で効果が出てまた短時間で効果が弱まるいわゆる睡眠導入剤として使われるものから、短時間型⇒中間型⇒長時間型という様に多様な薬があるために、患者さんの不眠のタイプ、つまり寝入りが悪いのか、睡眠途中や早朝に目覚めるのかによって、薬の使い分けや同時服用などの治療の選択肢が広いという特徴があります。

 しかし、特に長時間効く睡眠剤は、夜中にトイレに起きた時にふらついたり転倒する危険が高まったり、朝起きにくくなったり、日中にも眠気が続き集中力や記憶力が低下するといった恐れが出てきます。また長期間飲み続けると、薬の量が増えたり、薬を止める時に反動的な副作用が起こる可能性があります。

 そのため、現在公表されている「睡眠障害の対応と治療ガイドライン」や「睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン」に則って適切な診断と治療をする必要があり、また薬を減らして行く方法にも工夫が必要なのです。不眠症の原因の中には、睡眠時無呼吸症候群やむずむず足症候群、うつ病や夜間頻尿、他の薬の副作用といった不眠症以外の治療も必要な場合がありますので、医師の適切な診断が重要です。

また最近は非ベンゾジアゼピン系薬剤といって、ベンゾ系薬剤より副作用や依存の少ない薬(マイスリー、アモバン、ルネスタ)や、睡眠ホルモンであるメラトニンの薬(ロゼレム)、また覚醒ホルモンであるオレキシンの働きを妨げる事で眠気を誘う薬(ベルソムラ)など、これまでのベンゾ系の薬とは異なる働きをして、眠りと覚醒の日内リズムを改善する薬も登場してきました。

日本人は睡眠薬を必要以上に怖がる傾向があると言われていますが、これらの新種の睡眠薬を用いることでベンゾ系薬剤の副作用を減らした不眠症治療も可能となってきているのです。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会