濵田暁彦医師 コラム No.55
(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.187」2016年10月掲載)

「睡眠(すいみん)」の話ーその1

「不眠(ふみん)」に悩む人は年々増え続けています。皆さん自身、あるいは皆さんの周りに睡眠薬を服用している方も多いのではないでしょうか?

現在日本人の成人の5人に1人は何らかの睡眠障害を訴えており、20人に1人は実際睡眠薬の処方を受けていると言われています。若者よりも高齢者でよりその傾向が強く、原因は精神的なストレスや、様々な体の病気、うつ病や認知症、せん妄などの心の病気、薬の副作用、喫煙飲酒などの生活習慣や生活リズムの乱れ、騒音などの住宅環境、部屋の照明やテレビ、スマートフォンの光などの生活環境によるものと、様々な原因が関係しています。さて「眠る」とはどういう事なのか?なぜ人や動物は眠るのか?なぜ「夢」をみるのか?といった疑問が昔から研究され、少しずつ解明されてきました。

基本的には人間の眠りとは「体の休息」と「脳の休息」を行っている状態と言えますが、脳を持たない無脊椎動物や原始的な微生物、植物でも概日リズム、つまり昼夜の変動に対応して活動と休息のリズムがあります。

昼行性と夜行性、一日に何度か休息状態をとる生き物など様々ですが、以前の「時計遺伝子の話」でもお話した様に、どの生物も太陽の一日の周期を基本とした体内時計に従って活動と休息を定期的に行っていて、この「休息期間」が睡眠の始まりと考えられるのです。

生物が進化して動物が生まれ、脳を持つ脊椎動物が現れても、魚類や両生類と言った初期の脊椎動物では人間の様な「脳の休息」は確認されていませんが、一生泳ぎ続ける遠洋の回遊魚たち、マグロやカツオ、イワシなども、水族館でもよく観察すると、朝方と夕方に活発に泳ぎ日中と夜間はゆっくりと泳ぐと言う様に体の活動を時間によって休めていて、更に数秒の間ほとんど動かず惰性で進んでまさに脳が眠っているかの状態になることも知られています。

この様に脊椎動物の中でも、魚類、両生類、は虫類といった変温動物は、人間のような睡眠ではなく主に体を休める「原始睡眠」「中間睡眠」といった睡眠状態で休みます。それに対して、恒温動物である鳥類とほ乳類の大部分は基本的には「真睡眠」と言って私達人間と同じく「体を休める=レム睡眠」と「大脳を休める=ノンレム睡眠」を交互に行っていますが、渡り鳥やイルカなど、回遊魚の様に常に動き続けるほ乳類もいて、これらのほ乳類は「半球睡眠」と言って大脳の左側と右側の大脳半球を交互に休めながら動き続ける驚きの方法で眠っているのです。

半球睡眠にはまだまだわかっていないことも多く今後の解明が楽しみです。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。