濵田暁彦医師 コラム No.49
2016/03/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.181」2016年4月号より改訂)

「腸内細菌」の話ーその1

私は消化器内科を専門としているので、便秘・下痢など腸の不調を訴える患者さんを日頃から大勢診察しています。まず血液検査やレントゲン、CT、超音波、内視鏡など色々な検査をして明らかな病気が無いか、例えば大腸がんや腸閉塞、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患などが無いかをよく調べます。

 それでも何も見つからない場合は次に、大腸の働きの異常である「過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)」や「薬の副作用」などを考えます。特に薬では、「刺激性下剤」と言って腸を刺激して便を出すタイプの下剤には注意が必要です。市販されている下剤にはこのタイプが多く、アントラキノン系と言われる成分、具体的には「センナ」「大黄(ダイオウ)」「アロエ」「カスカラ」などが入っている下剤です。

 下剤を飲まれている方は一度成分表で確認してみて下さい。これらの下剤は、ある種の腸内細菌によってレインアンスロンという有効成分に作り替えられ、痛みや炎症物質と言われるプロスタグランジンEを増加させることで腸の筋肉を収縮させて便を押し出しますが、同時に痛みを感じることもあります。

 また水分を吸収するアクアポリン3を減少させ腸からの水分吸収を抑えて便に水分を含ませ下剤作用を発揮します。そのため刺激性下剤は腸内細菌が減ってしまうと効き目が少なくなり、どんどん下剤の量が増えて便秘が悪化するという悪循環に陥りがちです。

 また別の例では、風邪などの時に安易に抗生物質を飲むと、その後下痢がひどくなる場合があります。これも抗生物質の作用で腸内細菌のバランスが乱れてしまい、病気を引き起こす悪玉菌が増えてしまうことが原因です。普段腸の中には約1000種類、100兆個ともいわれる非常に多くの多様な細菌が一定のバランス・秩序を保ちながら仲良く(?)暮らしています。

 この腸内の細菌全体のことを「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」や「腸内フローラ」と呼びます。叢は「くさむら」という字で、フローラは「お花畑」の意味です。どちらも腸の中に共生している「多種多様な多くの細菌の集団」を意味しており、人間も動物も1人1人が自分自身の腸内フローラを持っているのです。便秘や下痢などの場合、この腸内フローラの乱れを建て直したり、抗生物質で腸内フローラが乱されることをあらかじめ予防することでかなりの場合改善が期待できるのです。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会