濵田暁彦医師 コラム No.47
2016/01/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.179」2016年2月掲載)

「時計遺伝子」の話-その1

私達は一定のリズムに従って一日の生活を送ることで、無意識のうちに健康的な生活をしています。

特に睡眠と食事のリズムを考えてみると実感できると思います。睡眠不足や十分な食事が摂れなければ、当然体調は悪くなります。しかし、睡眠時間が長く食事の量が多くても、睡眠と食事の「リズムが不規則」だとどうでしょうか?皆さんも経験があると思いますが「不規則な生活」では、いつまでも眠気が取れなかったり食欲が出なかったりと、やはり体調不良になるでしょう。

このような「当たり前」とも思える生活リズムと健康との関係が科学的に徐々に明らかになっています。眠気や空腹を定期的に感じることで、私達には「体内時計」があることが実感されますが、1972年にこの体内時計が脳の中の小さな部位に実際に存在することが発見されました。更にその25年後の1997年に、私達の体を作る細胞の中の「遺伝子」に実際に時を刻む体内時計の仕組みが書き込まれていることが明らかにされました。この遺伝子は「時計遺伝子」と名付けられ、その後この20年程の間に20種類以上の時計遺伝子が発見され、人間だけでなく現在地球上に生きている全ての生物、つまり細菌の様な微生物から植物や動物まで全ての生き物が共通して時計遺伝子を持っているということが解ってきたのです。これは大変な発見で、逆に言うと地球上で生きて行く上では時計遺伝子は必要不可欠だということなのです。

2005年に、この時計遺伝子のひとつ「クロック」に異常のあるマウスがメタボリック症候群になる事が、有名な科学雑誌「サイエンス」に報告されて以来、時計遺伝子が司る生体リズムと病気との関係が次々と明らかになってきました。驚くことに生体リズムの乱れや、高齢になり時計遺伝子の働きが低下することが、高血圧、糖尿病、高コレステロール、肥満などの生活習慣病を引き起こすだけでなく、骨粗鬆症やうつ病、発癌や老化の原因にもなることが解ってきました。

現在この体内時計の機構を知り活用することで健康を考える「時間医学」という医学分野が生まれて来ており、今後生活のリズムから病気を未然に防ぐ医学が発達して行くと期待されています。

執筆
濵田 暁彦

宮津高校、京都大学卒。
丹後中央病院消化器内科主任部長、京都大学医学部臨床講師、宮津武田病院非常勤。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断(ESD)、胆膵内視鏡ERCP、超音波内視鏡等が専門。