濵田暁彦医師 コラム No.42
2015/08/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.175」2015年9月号より改訂)

救急編~その3「蜂アナフィラキシーショック」

夏の救急外来には「蜂刺され」の患者さんが増えてきます。刺された痛みや局所の腫れ、軽い蕁麻疹(じんましん)ならば、ステロイド剤や抗アレルギー剤、鎮痛薬などの治療で済むのですが、蜂に刺された数分後に全身に蕁麻疹が出現して、のどの腫れを引き起こし呼吸困難や血圧低下に至る「アナフィラキシーショック」の状態になると命に関わる一大事です。

 これは即時型アレルギー反応の最も重い症状で、特に一度蜂に刺されて3年ほどの間は、蜂毒に対するIgE抗体というアレルギータンパクが体内で作られていて、次に刺された時にこのIgE抗体が即座に働いて急激に強いアレルギー反応が起こるのです。その場合はのどが詰まる前に早く救急車を呼んで、アドレナリン注射という薬で急いで治療しなければ、窒息死してしまう危険が高いのです。

 毎年日本中で20人ほどの方が蜂刺されによるアナフィラキシーショックで死亡されています。これは蛇や熊などの動物に襲われる被害の中で一番多い被害件数です。最近では自己注射用アドレナリンも処方できるようになったので、野山で作業をする仕事の方などは、一度蜂に刺された時にはこの自己注射を処方してもらい携帯しておくと急場をしのげる可能性があります。

 蜂の中でもススメバチは最も攻撃的ですが、アシナガバチやミツバチの蜂毒でもアナフィラキシーショックになる場合があります。クマバチは比較的おとなしく、滅多に人を刺さないそうです。

 また豆知識ですが、襲ってくる蜂はメスの「働きバチ」のみでオスには針がありません。これは蜂の針がメスの産卵管が発達したものだからです。スズメバチは春、冬眠から覚めた一匹の女王蜂が巣作りを始め産卵します。初めはメスの働き蜂ばかりが羽化して行き、皆で巣を大きくして行き翌年の女王蜂候補を育てます。次いでオスの蜂が羽化し、最後に嬢王蜂候補が羽化します。オスの蜂は女王蜂候補との交尾以外には何も働きません。巣作りやエサ集め、子育て、そして外敵への攻撃は全てメスの働き蜂がするのです。

 このように深い絆と秩序によって形成されたスズメバチの巣に知らずに近寄ることでスズメバチに襲われます。野山に行く際には、黒よりも白い服装で、香水等の強い香りを付けることは避けて、蜂の巣に近づかない様に十分注意し、蜂に刺された後に蕁麻疹と呼吸困難を感じた時には迷わず救急車を呼びましょう。

執筆
濵田 暁彦


1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会