濵田暁彦医師 コラム No.39
2015/05/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.174」2015年6月号より改訂)

「熱」の話ーその2

熱が出る病気で最も多いのはやはり「感染症」ですが、教科書的にはほかにも「悪性腫瘍(がんや白血病、悪性リンパ腫など)」や「膠原病(こうげんびょう)」といった病気も発熱の原因として挙げられています。

 実際には悪性腫瘍でも腫瘍が小さい間は熱が出ない場合が多いのですが、感染症の症状に乏しく原因不明の発熱が続く場合には、感染症ではなく「悪性腫瘍」や「膠原病」という病気の検査もして行きます。

 悪性腫瘍の中では、白血病や悪性リンパ腫と言った血液の腫瘍で比較的発熱しやすいのですが、腫瘍そのものから発熱を促すタンパク質が出されたり、腫瘍細胞が急に大きくなる際に壊死(えし)を起こして、細胞死した後を免疫細胞が掃除をする際に発熱物質を出したり、さらにはどんな腫瘍でも進行してくると体力が低下し免疫力が落ちてしまって肺炎などの感染症にかかって熱が出る場合が多く、悪性腫瘍の発熱の原因は実に様々で診断は複雑です。

 一方「膠原病」という病気は、自分の持っている免疫細胞が暴走して制御不能となってしまう病気で花粉症の時にお話ししたアレルギーに似ていますが、「関節リウマチ」や「SLE(エスエルイー)」、「シェーグレン症候群」などが代表的で多くの種類の病気があります。暴走した免疫細胞から発熱物質が出されて熱が出るわけです。

 しかし「悪性腫瘍」も「膠原病」も、感染症の治療薬の「抗生物質」や熱を下げ痛みを抑える「解熱鎮痛剤」だけでは治りません。悪性腫瘍なら手術や抗がん剤治療が必要ですし、膠原病ならステロイドや免疫抑制剤の治療が必要だからです。しかし解熱鎮痛剤やステロイドを使うと、一時的には悪性腫瘍や膠原病の熱が抑えられ一見病気が治ったかに思えます。さらに抗生物質を悪性腫瘍や膠原病に使っても効果はありません。

 正しい診断が行われないと発熱を繰り返し、あちこちの病院にかかったりするためにかえって本当の病気の診断が遅れてしまうことも多いのです。そのため熱が出た場合に安易に解熱鎮痛薬や抗生物質を使う「対症療法」を行うのではなく、まずどのような原因で熱が出ているのかを見極めて適切な治療をすることが重要なのです。

執筆
濵田 暁彦


1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会