濵田暁彦医師 コラム No.36
2015/02/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.171」2015年3月号より改訂)

「感染症の話」その4

今回は細菌よりも更に小さな病原体「ウイルス」についてお話します。ウイルスは約10ナノメートルと非常に小さく(1メートルの1億=100,000,000分の1)、普通の光学顕微鏡では見えず、電子顕微鏡という大がかりな器械で初めて見ることができます。更にウイルスは細胞の構造を持たないため自分で増えることが出来ません。

 ヒトなど他の生物の細胞の中に侵入して、その細胞の中の栄養を利用して増えて行きます。ちょうど細胞に寄生した「やどかり」の様なものです。そのためウイルスは寄生している主=宿主(しゅくしゅ)が死んでしまうと自分も生きて行けなくなるため、2種類の生き伸びる戦略を取っています。

 1つ目は症状が強く目立ちやすいけれど、感染力も強いタイプです。これらのウイルスは症状が派手に出るため宿主の免疫細胞に早々に気付かれ攻撃されてしまいます。そのため免疫細胞と戦闘状態になる前に次々と別の宿主に感染して広がって行くのです。名付けて「過激派、無差別拡散タイプ」です。この手のウイルスには、「かぜ」 の原因ウイルスのライノウイルスやコロナウイルス、またインフルエンザウイルスや胃腸炎のノロウイルス、近年話題のエボラ出血熱ウイルスなどが挙げられます。

2つ目は症状がほとんど出ず、感染力が弱いタイプです。宿主の細胞の中でおとなしく何年も隠れており、宿主に気付かれない様にゆっくりと細胞や臓器を悪化させ、たまたま血液などを介して人知れず他の宿主に感染する「穏健派、狙い撃ち感染タイプ」です。この手のウイルスには、エイズウイルスやB型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、成人T細胞白血病ウイルスなどが挙げられます。非常に小さな寄生体ですが、ウイルスは巧みな戦略をとりつつ脈々と生き延びて来ているのです。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会