濵田暁彦医師 コラム No.35
2015/01/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.170」2015年2月号より改訂)

「感染症の話」その3

「細菌」は単に「菌」や「バイ菌」とも言いますが大変よく知られた存在です。しかし「真菌=カビ」や「ウイルス」とは違う種類で、その違いを知っている方は少ないかもしれません。細菌はヒトの細胞の約10分の1(約1マイクロメートル)と小さく、1つの細胞が1個体の「単細胞生物」です。

 また「核」や「ミトコンドリア」と言った細胞内の小器官を持たない単純な作りの「原核生物」で、細胞の中に核やミトコンドリアを持つカビやヒトなど「真核生物」とは構造が異なります。また「ウイルス」は細菌より更に約100分の1も小さく(約10ナノメートル)、遺伝物質の「核酸」をタンパク質の殻で覆っただけの構造で、他の生物の細胞の中に寄生しないと増殖すらできないため、「生物」かどうかも曖昧な存在です。

 ヒトの体には、皮膚や口、腸の中などにブドウ球菌や大腸菌などの「常在細菌」が数多く生息していますが、ほとんどの場合病気を引き起こすことはありません。例えば腸の中には約1000種類、100兆個の細菌が生存して、栄養素を作ったり免疫力を助けるなどして私達と共生しています。

 しかし病原性を持った細菌は毒素を出したり直接ヒトの細胞内に侵入して強い傷害を引き起こし肺炎や腸炎、尿路感染などの「細菌性感染症」を引き起こします。高度の炎症が起こり高熱が出て脱水症状を引き起こすなど重症になることもしばしばです。このような時に抗生物質を治療薬として使います。

 しかし抗生物質は腸内細菌の様に悪さをしない善玉菌にも作用するため、使い方を誤ると腸内の環境を破壊し免疫力を低下させたり、抗生物質の効かない「耐性菌」を増やしてしまい、いざ重症の肺炎などの時に抗生物質が効かなくなるなど様々な副作用をもたらします。

 例えば鼻水やのどの痛み、咳と言った「かぜ」の場合に細菌が原因である場合は1割程度しかなく、ほとんどの場合は抗生物質が無効なウイルスが原因です。そのため鼻、のど、咳のかぜに原因菌を見極めずに安易に抗生物質を処方することは基本的には間違っています。

 処方するなら肺炎球菌や溶連菌、マイコプラズマ(正確には細菌ではありません)と言ったかぜの原因となる各種類の菌を特定するような迅速検査をして、陽性となる場合だけに抗生物質を処方するべきです。また菌の種類によって有効な抗生物質の種類も違うためにその菌に最も適切な抗生物質の処方が必要なのです。もし皆様がかぜを引いて医者にかかる時にはこのことに注意をして下さい。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会