濵田暁彦医師 コラム No.34
2014/12/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.169」2015年1月掲載)

「新年明けましておめでとうございます」

2014年の医療関係の話題をまとめてみました。

まずiPS細胞の患者さんへの治療応用がいよいよ始まりました。9月に「滲出型加齢黄斑変性」という難病患者さんにiPS細胞から作った「網膜色素上皮細胞」が世界で初めて移植されました。まだ臨床研究の段階ですのでこれから効果や副作用などが明らかにされて行くでしょうが将来性のある喜ばしいニュースです。その傍ら日本人が海外の有名な科学雑誌に掲載した「STAP細胞」論文と、「ディオバン(高血圧治療薬)」論文がいずれもデータの改ざんにより取り下げられるという国際的に非常に不名誉な事件もありました。

まずSTAP細胞に関してですが、ある新たな科学実験の結果が認められるためには「再現性がある」ことが科学の世界では必要です。つまり一度きりの出来事では科学的とは言えず(それは超常現象です)、他人が同じ手順で実験を行っても同じ結果が得られるということが必要なのです。しかしSTAP細胞は結局その後誰も再現実験に成功しませんでした。つまり科学的に正しいと証明されなかった訳です。

またディオバンという薬のデータ改ざんに関しては、薬の効果を調べる最近の方法は「大規模臨床試験」と言って、多数の患者さんを対象に本物の薬を飲む群と、偽薬(見た目には同じだが薬の成分の入っていないもの)を飲む群に分けて、そのうち何人に薬が効いたかを調べて統計学という数学で「有意に差がある(=薬が有効である)」かを計算します。しかし良い結果を出したいがために、ディオバンという薬の効果があった人の人数を水増しして「有意差がある=薬が有効である」という嘘の結果を世界的に権威のある医学論文雑誌に載せてしまったのです。

2014年には青色発光ダイオードの発明で3人の日本人がノーベル物理学賞を同時に受賞したという快挙の陰で、このようなモラルに欠けた一部の人のために国際的に日本の科学者の信用がなくなってしまうことは今後二度とあってはなりません。

(余談)私の与謝野町診療所への勤務が今年3月一杯で打ち切られることとなりました。内科医療を縮小する方針だとの理由でした。今後は与謝野町の方々の健康を陰ながら祈りたいと思います。

執筆
濵田 暁彦

1974年宮津生まれ。宮津高校、京都大学卒。消化器内科専門。丹後中央病院勤務。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」を行うこと。早期がん治療ESDや胆膵内視鏡ERCP・EUSなど内視鏡による検査・治療が専門。

毎週火曜日午前:与謝野町診療所 内科担当