濵田暁彦医師 コラム No.33
2014/11/20(与謝野町くすぐるカード会発行「くすぐる vol.168」2014年12月号より改訂)

「感染症の話」その2

今回は「真菌(しんきん)」についてです。真菌とはカビのことですが、真菌の細胞はヒトの細胞と同じように「核(かく)」と呼ばれるDNA遺伝子を入れた袋を持っています。これが核膜を持たない「細菌」とは大きく違う点で、より高等な生物の証しです。

 真菌による病気を「真菌症」と言いますがあまりなじみが無いかも知れません。しかしヒトの口や消化管の中、皮膚などには「カンジダ」という真菌が必ず存在しており実はなじみが深いのです。このようにヒトの体に住み着き普段は病気を引き起こさない真菌や細菌の事を「常在菌(じょうざいきん)」と呼びます。

 しかし免疫力が低下した際にはこの常在菌が病気を引き起こす「日和見(ひよりみ)感染症」の原因となります。カンジダも普段は何の症状も起こさないのですが、免疫力が低下した時などに「カンジダ症」として様々な病気を発症してしまいます。

 その他にも「水虫」や「タムシ」「シラクモ」は「白癬(はくせん)菌」という真菌による感染症として有名です。しかしその治療は一般的にされているように患部だけに少し薬を塗っただけではなかなか治りません。例えば足の水虫なら両足の足首まで広い範囲にたっぷり薬を塗らないとなかなか治らないですし、爪白癬なら爪が完全に生え替わるまで飲み薬を数ヶ月間飲み続ける必要があります(*注9)。

 しかし真菌の中には食卓に上がる「キノコ類」や、パンやお酒を発酵させる「酵母」と言った人間の役に立つものも多くあります。最後にもう一つ人間の役に立った真菌の話です。1928年にイギリスのフレミングという医師が「ブドウ球菌」という傷から化膿を引き起こす皮膚の常在菌を研究していた時、偶然培養していたブドウ球菌の中に青カビが落ちてしまいました。

 しかしその青カビの周りのブドウ球菌が発育しない事を発見し「青カビから細菌の発育を抑える物質=抗生物質」が出ていることに気づいたフレミングは青カビの属名であるPenicilliumにちなんで「ペニシリン」と名付けました。その後フローリーとチェーンという科学者がペニシリンを抽出することに成功し、ペニシリンは第二次世界大戦で多くの負傷兵の命を救いました。1945年に世界で初めての抗生物質を作り出したこの3人にノーベル医学生理学賞が贈られました。

*注9)
最近ははけで爪に塗るタイプの爪白癬の塗りぐすりも登場しています。

執筆
濵田 暁彦

1974年京都府宮津市生まれ。1993年宮津高校卒業。1年間浪人生活を京都駿台予備校で送り翌年京都大学医学部入学。2000年京都大学医学部卒業後、京都大学医学部附属病院内科研修を1年行う。2001年京都桂病院内科に研修医として赴任。2002年京都桂病院消化器内科医員となり、2007年同副医長。2010年故郷である丹後中央病院消化器内科部長として赴任。現在丹後中央病院消化器内科主任部長兼内視鏡室室長、他に京都大学医学部臨床講師(2015年〜)、宮津武田病院非常勤を務める。モットーは「楽な胃カメラ」「痛くない大腸カメラ」。早期癌の診断治療(拡大内視鏡・食道胃大腸ESD)、胆膵管内視鏡ERCP、超音波内視鏡EUS、EUS-FNA等が専門。機能性胃腸症:FDや過敏性腸症候群:IBS、便秘などで苦しむ患者さんの治療や、様々な不定愁訴に対しても西洋医学(総合内科)と漢方医学を融合させた医療を実践中。また老衰や認知症に伴う肺炎などの終末期患者さんの看取りや、各種がんの終末期緩和ケア&看取りをこれまで多くの患者さんに行い、安らかな最期を迎えられるようチーム医療で取り組んでいる。

所属学会・認定専門医
日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医・専門医、日本膵臓学会、日本胆道学会、日本臨床細胞学会、日本食道学会、日本肝臓学会、日本ヘリコバクター学会認定医、日本腹部救急医学会、日本時間生物学会、日本臨床腸内微生物学会、日本東洋医学会